授業・教育にすぐに役立つ教育技術・指導法を開発し、集め、互いに追試し、検討しあって自らの授業技術を高め、そのような技術や方法を全国の教師の共有財産にしようと努める教師の研究団体です。会員は1万人を超える、日本最大の民間の教育研究団体です。
TOSSは、東京都の公立小学校教諭であった向山洋一(むこうやま よういち)が1983年に立ち上げた、「教育技術の法則化運動」が前身となっています。
向山がこの運動をはじめたきっかけとなったのは、跳び箱の指導法でした。
ある教師が、跳び箱を跳べない子を1時間で跳ばせることができると断言しました。しかし、その技術を公開しませんでした。向山はそのことに疑問を感じ、自ら10分間で跳ばせる方法を開発し、発表しました。
そして、「跳び箱を全員跳ばせられることが、なぜ教師の世界の常識にならなかったのか?」と教育界に問いました。優れた教師が授業の技術を自分だけの「名人芸」にするのではなく、そして困っている先生が一人だけで苦しむのではなく、先生方がそれぞれ持っている教育技術・方法を情報交換し、全国の先生の共有財産にしていくことが必要だ。向山はそう訴えました。
そのような経緯から誕生したのが、向山を代表とする「教育技術の法則化運動」です。
全国でのセミナー・合宿による研修、教育技術の書籍、授業書シリーズの出版などを通して広く紹介されました。たった10人でスタートした教育技術の法則化運動は、若い教師を中心に広がり、数年後、日本で最大の教育研究団体になりました。
教育技術の法則化運動には、発足当時から4つの理念が掲げられています。
21世紀になり、教育技術の法則化運動は解散、TOSS(Teachers' Organization of Skill Sharing)と名前を変えて再出発しました。先ほどの4つの理念はTOSSにも受け継がれました。
TOSSでは、インターネット上で先生方が教育技術を共有できるように、「TOSSランド」というポータルサイトを立ち上げました。各教科の授業案から、学級経営の技術や特別支援教育などさまざまな分野にわたってのコンテンツが2万以上登録されています。現在、アクセス数は累計で約1億3千万、1ヶ月に200万のページビューがあり、世界70カ国からのアクセスがあります。
TOSSでは、医師や専門家と連携した「特別支援教育」の研究・教材開発をはじめ、子供たちが地域に誇りを持てるような「観光まちづくり教育」、全国の郵便局と連携した「郵便教育」、親子の絆を深める「親守詩(おやもりうた)大会」など、幅広い活動を行っています。
TOSSは、日本のさまざまな問題に対して教育の立場から向き合い、多くの機関と連携して、研究・開発・企画・運動を行っています。